序章 こんな家庭で起きやすい -財産の不正操作 完全ガイド遺産分割の弁護士

財産の不正操作は、遺産相続の場面においても、遺産相続の場面以外においても、誰にでも起こりうる問題です。遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が、財産の不正操作が発生しやすい家庭のパターンを紹介します。
財産の不正操作が問題になる家庭には一定の共通点があります。
財産の不正操作を誘発する環境や、財産の不正操作に及ぼうとする動機が存在しているのです。
以下のパターンに当てはまる方、要注意です。遺産相続が発生した際に財産の不正操作を発見して、慌てて遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談するということにならないよう、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が指摘する各パターンについて十分に理解しておきましょう。

1 不動産をたくさん持っていて、管理していない方序章 こんな家庭で起きやすい

財産の不正操作をする者は不動産の名義を移転させることで、高額な不動産を自分のものにしてしまいます。
遺産相続が発生し、遺産分割を経て自分のものになったわけでのないのに、自分で勝手に不動産を売却してしまうこともあります。
不動産は文字通り動かないものですから、手に取って確認する機会もなく、貸したり住んだりという利用形態に変化がなければ、名義変更や所有権移転の現状変更に気づきようがありません。自分が実際に住んでいる不動産でなければ、管理もいいかげんになっていることが多いもの。大地主がわずか数年間の間に、ほとんどすべての不動産を根こそぎ不正操作されることもあります。
登記簿謄本を取り寄せて不動産の状況を確認することは、遺産相続が発生した場合でなければ、日常生活ではまずありません。不動産を担保に銀行からお金を借りたり、不動産を売却したりするときでなければ、登記簿謄本など見ることはないのが通常でしょう。
大部分のケースでは、遺産相続が発生して、遺産分割を行うために財産目録を作成するときなどに不動産の不正操作が発覚します。
しかし不動産の名義を勝手に書き換えることがどうして可能なのでしょうか。売買や遺産相続の時に行われる不動産の名義変更の手続きはそんなに簡単にできるのでしょうか。不動産の名義変更手続きについて、遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
不動産の名義を移転させるためには、登記原因を証明する情報(贈与契約書など)、登記済権利証又は登記識別情報、受贈者の住民票、贈与者の印鑑証明書、受贈者・贈与者双方の委任状(実印を押印)、名義を移転する不動産の固定資産税評価証明書などが必要です。
委任状と実印、登記済権利証又は登記識別情報、印鑑証明書は、家族であればいとも簡単に入手できますし、残りの書類も入手・作成することが可能です。
委任状は本人の署名を偽造することもありますし、何かの口実で委任事項が全く書かれていない委任状(白紙委任状)に署名させることもできます。実印や登記済権利証又は登記識別情報は、タンスの引き出しから持ち出せば事足ります。
登記システムとしては、平成17年3月からオンライン申請が導入されたことも、財産の不正操作を容易にしています。売買や遺産相続の際に行う登記の申請は従来、当事者又はその代理人が出頭しなければならないという出頭主義が採られていました。オンライン申請の導入に伴い、出頭主義は廃止されました。申請人などの負担軽減の観点から、申請人やその代理人が登記所に出頭することなく、登記申請書を郵送することで書面申請が可能になったのです。登記申請をするハードルが低くなったことから、より秘密裏に、簡単に名義を変更できるようになってしまいました。
実は、印鑑証明書については、問題が非常に多いのです。印鑑証明書は遺産相続の場面でよく使用される書類です。印鑑証明書とはどのような書類なのか、どのように入手するのかについて、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が解説します。
遺産相続の場面においてはもちろんですが、遺産相続の場面以外でも、印鑑証明書は本人確認にも使われます。
他人が印鑑証明書を入手するにあたって、印鑑登録証(カード)を持っていることは必須条件です。印鑑登録証を他人に交付することは、通常はありません。だからこそ無断使用された場合に、本人が入手に関与していないことを主張するのは簡単ではないのです。
しかし実際には、印鑑証明書は印鑑登録証を市役所などに持っていくことで、本人でなくても簡単に取得できます。
印鑑登録証明書の交付方法は、窓口に出向いて必要事項を書いた用紙と印鑑登録証(カード)を見せる方法と、自動交付機に印鑑登録証(カード)を入れて暗証番号を入力する方法があります。

印鑑証明書の入手方法
印鑑証明書の入手方法

財産の不正操作が絡む遺産相続トラブルに関する裁判で、印鑑証明書の無断取得を主張するにあたっては、他人が印鑑登録証(カード)を持っている理由が問題になります。盗難などの事情のない限り、特に自動交付機で取得した場合には、暗証番号が打ち込まれる以上、本人が自ら取得した、あるいは暗証番号を代理人に教えていた、入手者が暗証番号を知り得る立場にあったことになり、本人の関与があったと強く推測されることになるのです。
つまり、印鑑証明書の交付に関して本人が何らかの形で関与したことまでは認められる可能性があるのです。財産の不正操作を暴き遺産相続トラブルを解消するための重要なポイントを遺産分割専門の遺産相続弁護士が指摘するとすれば、印鑑証明書の交付に本人が関与していないことを主張するということです。
一方、印鑑証明書が不動産売買に利用された場合、代理人が本人の印鑑証明書を取得していることと、本人が代理人に対して不動産売買に関する代理権を授与していたことは、イコールではありません。別件で入手を依頼した印鑑証明書を、不動産売買に流用することもあるからです。
この場合、以前に別件で印鑑証明書の交付を依頼していたなどの事情を主張することで、本件の印鑑証明書の無断使用を主張することは可能です。

2 銀行口座を複数持ち、日常用と定期などを分けている方序章 こんな家庭で起きやすい

銀行口座を複数持ちながら、ずさんな管理をしている場合は、財産の不正操作の被害に遭いやすいといえます。
そもそも日本人は平均いくつの口座を持っているのでしょうか。
政府によると口座開設数は約12億口座。国民1人当たり平均10口座持っていることになります。
以前は銀行口座を持つことが簡単で、実在しない人間の口座を開設することもできました。
現在、金融機関は厳しい本人確認のもと、各金融機関1人につき1つの口座開設しか認めない方針のようです。原則、口座開設支店は自宅か勤務先の最寄りの支店ということになっています。もっとも現在でも1つの銀行で複数口座を開くことは全く不可能ではありません。
転職などを契機にメインバンクを変更した場合は、結果的に全国各地の金融機関に預金口座を持つということもあります。遺産相続が発生して、被相続人の財産に関する各金融機関から照会結果を見ていると、思いのよらない支店に口座が開かれていることがあります。
遺産分割に詳しい遺産相続弁護士として担当した案件でも、銀行への調査により初めて存在が明らかになる口座がたくさんあります。取引履歴を調べてみると、中身がとっくの昔に盗まれていたことが判明するケースもあるのです。
一般的に銀行口座は、日々の生活費を引き下すために日常的に使用します。お金が引き出されていることに気づかないのは、日常的に使う口座とは別の口座がある方、もしくは現金商売の方でしょうか。
特に管理が行き届かず存在を忘れてしまいがちなのは、定期預金の口座です。普通預金は日常的に使用しているものの、通帳が普通預金とは別になっている定期預金の方は、開設したことすら忘れている場合もあります。証書を発行するなど、定期預金通帳を総合口座として発行しない銀行もあります。容易に紛失しやすい定期預金証書の場合は、残高が多額に及んでも休眠口座になりやすいようです。また、普段使う普通預金口座が被害にあえばすぐに気付くはずですが、定期預金が被害にあっても、なかなか気づかないようです。遺産相続が発生して被相続人の財産を確認して初めて、定期預金口座がごっそりと不正操作されていることに気付くケースは多くあります。

遺産相続弁護士のコラム 休眠口座も引き下し可能

多数の銀行口座を持つに至った結果、あるいはほかの理由で、休眠口座が生まれているようです。休眠口座には多額の金銭が眠っていることもあります。休眠口座とはどのような口座でしょうか。休眠口座の実態について、遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明します。
一般に10年間、取引がない口座を休眠口座といいますが、休眠口座は毎年約1300万口座、約850億円発生しているようです。
休眠口座がここまでたくさん生まれていること自体、預金者が口座の管理に無関心であるという証拠です。財産の不正操作の被害に気付かないのは、自分の銀行口座の取引履歴を確認していないからでしょう。
法律上は、預金は預金者にとっては債権、銀行にとっては債務に当たります。債権には消滅時効が定められており、10年間権利を行使しなければ消滅します(民法167条)。
債権の中でも、商行為によって生じた債権(商事債権)は上記時効期間よりも短く、5年間行使しなければ消滅するとされています(商法522条)。銀行は商法上、商人に当たりますので、銀行預金は商事債権とされ、5年間行使しないと時効により消滅してしまうのです。一方、信用金庫や信用協同組合などは商人に当たらないので、通常の債権と同様10年間行使しなければ消滅します。被相続人が10年以上もの間、口座の存在を忘れていて休眠口座になってしまっていたが、遺産相続が発生して遺産分割のために被相続人の財産を整理している際、休眠口座の通帳を発見することがよくあります。消滅時効のことを考慮すると、子の休眠口座の中に入っていたお金を払い戻すことはできないようにも思えます。
とはいえ実務上、金融機関は時効が成立した債権でも、記録が確認できる限りは払い戻しに応じています。時効が成立した債権でも、時効成立を主張(「時効の援用」といいます)せずに、銀行は任意で払い戻しに応じています。

3 銀行口座の暗証番号を家族に教えている方序章 こんな家庭で起きやすい

口座名義人である親が入院したり、老人ホームに入所したりしているのをいいことに、毎日50万円ずつ引き下されるケースは、遺産相続トラブルにおいて枚挙にいとまがありません。全て、暗証番号を知っているゆえに可能な不正操作です。遺産相続発生後に遺産分割協議の場で通帳の取引履歴が開示されない限り、こうした不正操作が発覚することはありません。
本来暗証番号は、自分以外の者がATM操作をできないようにするためのものです。
しかし、暗証番号を家族間で共有しているケースは珍しくありません。忙しくてATMに行けず、代わりに家族に引き出してもらうこともあるでしょう。誕生日と同じ暗証番号などは、家族間では公然の秘密になっています。
ATMの引き出し限度額は設定にもよりますが、1日50万円までというケースが多いでしょう。しかし、この50万円という金額に大きな意味はありません。毎日引き出せば1月1500万円。1億円を引き出すのに半年ほどです。
窓口で高額の引き下ろしをすると、振り込め詐欺などに対する警戒から、使途目的を聞かれることがあります。しかしATMで50万円を引き出すには何の説明も要りませんし、行員が毎日50万円ずつ引き出されていることにも気づくこともなかなかありません。
毎日不自然な入出金がないか預金、融資、営業の担当者がチェックし、一定額以上の金額に絞り込んで支店長に報告することもあるようです。しかし、大きな支店になると一日の取引量も多く、よほど特徴的な名前の口座名義人でなければ、同一人物の口座からの連続した多額の払い戻しであることに気づかないようです。暗証番号を知ってさえいれば、遺産相続発生前においては預金を払い戻し放題ともいえるのです。
遺産相続開始後は、被相続人が亡くなった時点で口座は凍結されるので、引き出されることはないはずではないか。そんな疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。しかし、実際には遺産相続発生後に不正操作をする者が被相続人の口座から払い戻しを受けてしまうケースが数えきれないほどあります。遺産相続発生後であるにもかかわらず、どうして不正操作をする者が払い戻しを受けることができるのか、そのカラクリを遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明します。
確かに、口座名義人が死亡した事実を銀行が把握した場合、その口座は凍結されてしまいます。金融機関から払い戻しを受けるためには、口座名義人が死亡したことが分かる戸籍謄本、法定相続人全員の戸籍謄本、法定相続人全員の印鑑証明書などが必要となりますから、遺産相続発生後においては不正操作をする者がこっそりと預金の払い戻しを受けることはできないとも考えられそうです。
しかし、あまり知られていませんが、亡くなった方の口座でも、銀行が口座名義人の死亡の事実を知るまでは自由に引き下ろせてしまうのです。遺産相続発生直後から残高がなくなるまで毎日50万円が引き出され、不正操作をした者により口座自体の存在が闇に葬られてしまうケースは実に多いのです。

窓口ATM
本人確認身分証明書パスワード
使途目的確認ありうるなし
引出し限度額なしあり
遺産相続弁護士のコラム 高額の引き出しに対するチェック

遺産相続弁護士として遺産分割に関する資料確認を行っている際、銀行預金の取引履歴を調べていると高額のお金が定期的に引き出されているのを発見することがよくあります。こうした高額の引き出しについて、金融機関は全く監視していないのでしょうか。高額の引き出さしに対する金融機関の確認体制について、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が紹介します。
短期間に高額の預金が引き下ろされるなどの不審な取引と思われる預金の動きについて、銀行は定期的に抽出して日本銀行に報告することになっています。
金融機関は、取引時確認の結果やその他の事情を勘案して、「疑わしい取引」に該当すると認められる場合には、金融庁監督局総務課などの行政庁に届け出る義務があります(犯罪による収益の移転防止に関する法律8条)。個別具体的な取引が「疑わしい取引」に該当するかどうかについては、金融機関などにおいて、顧客の属性、取引時の状況その他保有している当該取引に関する具体的な情報を総合的に勘案して判断することになります。
たとえば、次のような取引が挙げられます。

紛らわしい取引と判断されるケース

  • ①収入や資産に見合わない高額な取引など、多額の現金による入出金を行う取引
  • ②短期間のうちに頻繁に行われる取引で、入出金総額が多額である場合
  • ③夜間金庫への多額の現金の預け入れ、または急激に利用額が増加した取引
  • ④架空名義口座または借名口座であるとの疑いが生じた口座を使用した入出金
  • ⑤口座名義人である法人の実体がないとの疑いが生じた口座を使用した入出金
  • ⑥住所と異なる連絡先にキャッシュカードなどの送付を希望する顧客、または通知を不要とする顧客の口座を使用した入出金
  • ⑦多数の口座を保有していることが判明した顧客の口座を使った入出金
  • ⑧当該支店で取引をすることについて明確な理由がない顧客の口座を使用した入出金
  • ⑨口座開設後、短期間で多額または頻繁な入出金が行われ、その後、解約または取引が休止した口座を使用した取引
  • ⑩多額の入出金が頻繁に行われた口座を使用した取引
  • ⑪口座から現金を払い戻し、直後にその現金を送金する取引(特に、払い戻した口座の名義と異なる名義を送金依頼人として送金を行う場合)
  • ⑫頻繁な貸金庫の利用
  • ⑬公務員や会社員がその収入に見合わない高額な取引を行う場合
  • ⑭取引の秘密を不自然に強調する顧客および届出を行わないように依頼、強要、買収などを図った顧客が行う取引

しかし、不審な取引に当たるかどうかという判断はマニュアルで行います。容易に網をすり抜ける可能性もありますし、適切な間隔を置いて長期間に渡って引き出せば審査には引っかかりません。
「疑いがある」かどうかは、金融機関の従業員が、金融業界における一般的な知識と経験を前提として、取引の形態や顧客の属性、取引時の状況などを踏まえて総合的に判断しますが、特定の犯罪の有無まで認識している必要はなく、犯罪収益などであるという疑いを生じさせる程度の要素で足りるとされています。疑いがあるかどうかは、個々の取引の形態や顧客の属性などによっても異なりますので、一律にいくら以上の現金取引であるとか、何回以上の頻繁な取引であるといったように画一的に判断することはできません。

遺産相続弁護士のコラム 凍結された預金は本当に引き下せないのか

金融機関の実務では、遺産相続後の預金の払い戻しの際、相続人全員の署名押印のある遺産分割協議書(1口座ごとに相続人1名の単独相続となっている内容のもの)、または相続人1名を払い戻人の代表者とする内容で相続人全員が捺印した同意書の提出を求められます。
遺産相続に関するトラブルがあり、遺言の有無や寄与分を考慮する必要性など、具体的な相続分が明らかではない状態であるにもかかわらず、相続人全員の同意なく払い戻してしまうと、金融機関が相続人間のトラブルに巻き込まれることから、このような対応がとられているのです。
相続人にどうしても払い戻しを受けなければならない事情がある場合、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士としては、実務上どのような対応をとることになるのでしょうか。
金融機関を被告として各相続人が自己の相続分に基づき預金払い戻し請求訴訟を提起することになります。相続人勝訴の判決が下されれば、金融機関は払い戻しを拒否することはできません。
最近では、金融機関の中には、相続人からの訴訟提起に先立って事前に相談すれば払い戻しに応じるというところもあるようです。どうしてもお金が必要だが、遺産相続トラブルになっていて遺産分割が完了するまでに時間がかかるという場合には、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に一度相談してみるとよいでしょう。

遺産相続弁護士のコラム 日本人の意識が財産の不正操作の元凶?

暗証番号を家族で共有しているパターンは、地方に住んでいる方に多くみられます。そして共有している暗証番号を悪用した財産の不正操作は地方都市に多くみられます。なぜでしょうか。
一軒家にもかかわらず施錠もせずに外出したり、留守の間に知り合いが勝手に家に上がって待っていたりしても、日常的な光景として気にしない。食料品は全て近所からもらうばかりで、買ったことなどない方もいます。村落の共同体意識が強ければ、共同体の構成員は家族同然の意識を持っているところもあるでしょう。外の世界との境界線は各戸の玄関ではなく、隣町との境という感覚すらあります。
ぎすぎすとした都会特有の窮屈さがなく牧歌的で、田舎暮らしは憧れの対象ではありますが、セキュリティ管理が甘くなってしまいがちです。人を疑わない環境にあるせいか、預金通帳や印鑑カード、印鑑証明などの管理も甘い。仏壇の引出しなど、家族の誰もがアクセスしやすいところに家族全員の預金通帳などがまとめてしまってあり、自分以外の預金通帳を持ち出してもバレないことが多いようです。
遺産相続弁護士として多くの財産の不正操作事案を見ていると、財産の不正操作を許しているのは、日本人の家族観、共同体意識が根源であると実感します。
いったん家の中に入るとプライバシーの観念が希薄で、だからこそ玄関で靴を脱ぎ、家族の部屋に入るのも自由。日本人の特性として、家族の中では情報管理に鈍感になるともいわれます。家族の前では風呂上りに裸でリビングを闊歩するお父さんなども、日本の家族共同体意識の象徴ともいえるかもしれません。要するに、個人の領域と外の世界とを隔てる境界線が家の玄関にある以上、玄関の中に入ってしまうとセキュリティのことは一切考えないのです。こうした日本人特有の意識が、財産の不正操作の存在を許容することとなり、結果的には遺産相続をめぐるトラブルに発展させているとのいえるのです。

4 名義と実態がずれている財産をお持ちの方序章 こんな家庭で起きやすい

所有者の名前が書いてある物というのは、実はあまり多くありません。
不動産と銀行口座、株券それに自動車くらいでしょうか。
遺産相続の際によく問題になるのが不動産と銀行口座です。
中に入っているお金は父親のものなのですが、実際の口座名義人は長男になっている銀行口座。お金を出したのは父親なのに、実際には長男名義の登記になっている不動産……。このような財産は誰のものとして扱われるのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士による解説を見てみましょう。
法律上は一般に、名義のいかんにかかわらず、実際のお金を出した人間が所有しているという考え方をします(贈与や売買がなされていないことが前提です)。
銀行口座や不動産はいずれも長男のものではなく、父親のものということになります。父親が亡くなって遺産相続が発生した場合には、口座内のお金も不動産も父親所有のはずですから、相続財産になります。
しかし、父親がお金を出した事実を知らない家族もいます。長男しか事実を知らないのであれば、誰も問題にすることはなく、遺産相続トラブルは発生しませんので、長男の所有として相続財産にはならずに遺産相続手続きが進んでいくことになります。遺産相続において遺産分割のテーブルに乗らない財産となってしまうということです。父親がお金を出したという事情を知らないのであれば、相続人は遺産相続トラブルが発生しうるということを認識していないことになりますから、もちろん遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談して財産の不正操作を暴くということにもありません。不正操作をした者としては相続人らと戦うことなく、自分の財産として所有し続けることができるのです。
この場合、黙って自分の財産ということにしようとする長男こそが、不正操作をした者なのです。
遺産相続をめぐる紛争が激化するタイミングによっては、遺産相続開始前に親子間で訴訟をすることになるケースもあります。その財産は自分のものであると主張する親が、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談したうえで、子どもを訴えるということです。

名義は長男でも実態は父親の財産
名義は長男でも実態は父親の財産
遺産相続弁護士のコラム 名義と実態のずれが問題となるケース

実際にはどのようなケースで、名義と実態のずれをきっかけに、紛争になっているのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士がいくつか例を挙げ、解説します。
自立できない長男に援助を続ける父親。
数十年間で援助した総額は何千万円にも達してしまいました。
お金の出所が父親であるにもかかわらず、長男は自分名義の一軒家に住んでいます。
依存心が強い長男は、父親からの援助をもはや当たり前のように受け取っていますし、困ったことがあるとすぐに金の無心をする。そのうちに無断で父親の銀行預金にまで手を付けてしまうことに……。
長男名義の一軒家も、長男が無断で手を付けた銀行預金も、もちろん父親の財産ですから、他の兄弟からしてみれば勝手に持ち逃げされたのと同じ状況といえます。父親の遺産相続が開始した場合、この一軒家や銀行預金は父親の相続財産であるはずなのですが、財産の不正操作をした長男は自分の財産であると言って譲らないでしょうから、遺産相続トラブルに発展することになるのです。甘やかしが招く財産の不正操作です。
嫁姑問題を抱えている方はご注意を。
遺産分割専門の遺産相続弁護士として遺産相続でもめている家庭をみていると、嫁姑で息子を奪い合った結果、嫁が勝利したケースで財産の不正操作が多く発生しています。
息子は当初、母親と妻の間に立たされて調整役にまわっていましたが、やがて母親に牙を向け始めることに……。
名義がたまたま自分のものになっていた不動産や有価証券を、実際に自分のものであるかのように振る舞い始めます。ついには、不動産に居住中の両親に対して賃料を請求し始め、建物からの立ち退きを要求するに至りました。
当初は不動産を親のものであることを認めていた息子でしたが、嫁姑問題をきっかけに親と対立した結果、不動産は自分のものであるとして居直るパターンです。不動産の名義は息子になっていますから、このままの状態で親が亡くなり遺産相続が発生した場合、この不動産は親がお金を出したものであることを証明することが難しくなってしまいます。遺産相続をめぐるトラブルが裁判になった場合には、息子は両親に対して賃料請求をしていたことを証明するような書面(たとえば賃料を請求する旨が記載された内容証明郵便など)を証拠として提出し、自分は賃貸人として振る舞っていたのだから、やはりこの不動産は自分のものであると主張するでしょう。
執行逃れの目的で不動産の名義に作為を加えたことがきっかけになったケースもあります。
会社を経営する父親が債権者に対して個人保証で担保に入れていた不動産が、競落されることになりました。自分で競落しようとしたのですが、債務を将来的に負った場合でも物件は手放したくない。思案の結果、父親のお金で息子に競落させました。一時的に不動産の名義を長男のものとしておく合意ができていたのですが、その後に親子間の仲が悪くなってしまい、結局、親子間の訴訟に発展することになりました。親が死亡した場合には、兄弟間における遺産相続トラブルに発展し、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談して財産の不正操作をした兄弟と戦うことになるでしょう。親子関係の悪化が紛争を招いたケースです。

遺産相続弁護士のコラム 名義預金に注意

親から子へ財産を移転する贈与ですが、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談の立場から、警告したいことがあります。
贈与が成立しているかどうかについては難しい問題があり、場合によっては贈与したはずの財産が、贈与されていなかった扱いを受けてしまうことがあります。
長男名義の口座に被相続人のお金が入っていたからと言って、贈与が成立しているとは限りません。遺産相続発生前に、親が勝手に長男名義の口座を作成して、その中に自分のお金を入れていたことになれば、預金名義人は長男ですが、その口座は「名義預金」となり、遺産相続が発生すれば被相続人である親の相続財産になります。遺産相続トラブルでよく問題となる「名義預金」ですが、どのようなものなのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
名義預金とは、名義上は口座名義人の預金であるかのように見えるものの、実際にはほかの真の預金者が存在している預金のことです。例えば中学生のお孫さん名義の口座があったとします。この口座の中に1億円のお金が入っているとしたら、お孫さんが誰かから贈与を受けたなどの事情がない限り、中のお金は間違いなくお孫さん以外の第三者のもの。祖父がこっそりと孫名義の口座を作成し、貯めていたのかもしれません。遺産相続においては、飛ばし相続といって、一代飛ばしで遺産相続をすることによって相続税がかかる回数を一回でも少なくしようという意図で行われることが多いようです。しかし法律上は、孫の名義の預金口座に入れたとしても、祖父のお金であることには変わりがありません。
通常、中学生が1億円もの大金を持っているはずはないので、実質的な拠出者が他にいることは一目瞭然なのですが、成人して仕事をしている大人の場合は事情が変わってきます。本人の稼いだお金かどうか争われる余地があるからです。
名義預金かどうかの判断ポイントについて、遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。名義預金かどうかは、①贈与契約を結んでいるか、②贈与税を支払っているか、③受贈者が当該口座を管理しているかなどを基準に判断されます。
まず、①贈与契約を結んでいるかどうかが問題となります。孫が驚く姿を見たくて、内緒でお金を振り込みたい気持ちもわかりますが、贈与した事実が証明されなければ、祖父の財産と評価され、祖父の遺産相続においては祖父の相続財産となってしまいます。そもそも贈与は、贈与者と受贈者との間で「贈与の合意(意思表示)」があって初めて成立するものです。双方が互いに納得していることが必要なのです。
祖父が1億円を貯めていることを孫が知らない場合、贈与とは認められません。飛ばし相続の意図で孫の財産にするのであれば、遺産相続トラブルにならないためにも、孫との間で贈与契約を結んでおく必要があります。遺産分割専門の遺産相続弁護士から注意しておきたい点は、たとえ銀行口座の名義が孫であっても、その孫が口座の存在を知らなければ、祖父の口座として認定されてしまうという点です。
名義預金ではなく、孫に贈与したお金であることを明らかにするためには、贈与を行うときに、双方に贈与契約を締結する意思があることを確認する契約書を作成するべきです。契約書があることによって、「いつ」「いくら贈与したのか」を証明することができ、当事者双方の意思確認も明確になります。契約書の内容は簡単なもので構いません。贈与の事実、贈与者と受贈者の署名・押印があれば十分です。もっとも、後に遺産相続トラブルが発生し、せっかく孫のために貯めてあげたお金が相続財産だとされないためにも、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に贈与契約書の内容を確認してもらう方が安全でしょう。
次に、②贈与税を支払っているかという点もポイントです。贈与税を払うのは、あくまでももらう側です。たとえ少額であっても、贈与税を支払うことで、「贈与した」ことの証拠となります。贈与が認定されれば、祖父の遺産相続が発生した際、名義預金だとして祖父の相続財産に含まれることもなくなります。「確定申告が面倒だ」と躊躇される方もいるでしょうが、せっかくもらったお金が相続財産とされてしまうことを避けるためです。遺産分割専門の遺産相続弁護士からのアドバイスは、年1回の確定申告を、億劫がらずに行うべきだということです。
最後にポイントとなるのは、③受贈者が当該口座を管理しているのかという点です。銀行口座自体を祖父が管理していたのであれば、お金は孫のものと認められず、口座は名義預金であると認定されてしまいます。名義預金だと認定されないためには、贈与した以上は、受贈者本人である孫に口座を管理させるべきです。
もう一つ重要なポイントを遺産分割専門の遺産相続弁護士がお伝えします。通帳も印鑑も孫が自分で保管して自由に使えるようにすることです。口座の存在すら知らないということでは、受贈者が口座を管理していたとはいえません。家族同士であれば名字が同じ場合が多いでしょうが、銀行届出印も贈与者の印鑑とはあえて別のものを用意しましょう。通帳やキャッシュカードも、受贈者が自ら管理している状況を作っておくことが重要です。口座には孫のお金が保管されているのですから、孫自身がお金の引き出しを行うのが自然です。通帳もキャッシュカードも祖父が管理し、口座のお金には全く手をつけていない状態では、名義預金と認定されてしまいます。

名義預金かどうかの判断ポイント

  • ①贈与契約を結んでいるか
  • ②贈与税を支払っているか
  • ③受贈者が当該口座を管理しているか
贈与に該当するかどうかの違い
贈与に該当するかどうかの違い

5 家族経営で事業を営んでいる方序章 こんな家庭で起きやすい

不動産業者や病院経営者など、法人組織は持っているものの、実態はほぼ個人事業主という方。顧問の税理士の先生も高齢で、古き良きやり方で経理を担当されているので、法人のお金と個人のお金の区別が不明瞭になっていることもあります。
家族経営で現金決済が多く、経理担当者が何十年も交代していないケースも多いでしょう。法人のお金をオーナーに貸し付けていて、貸付金残高が雪だるま式に膨れ上がっています。結果、お金を管理する意識が希薄になり、これはそもそも誰のお金か、いつどのような経緯で入金されたか、口座の取引履歴をさかのぼってみても全く整理されていないため、何が何だかわからないといったケースはよくあります。このような状態でオーナーの遺産相続が発生すると、財産の不正操作の被害が次々と明らかになるのです。
法人口座から引き落とした後は一切、口座間のやり取りの形跡を残さず、現金でのやり取りになっていると、証拠も残りづらいといえます。また、普段使う通帳は別に持っているため、気づくのに遅れてしまうのです。自分が管理している通帳のみ把握し、安心している方は非常に多いです。
経営者も日常生活や仕事が忙しすぎて、細かな財産管理にまで気が回りませんし、遺産相続トラブルに備えて事前に遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談しておくことはしません。仕事が多忙になればなるほど、事務手続きは他人任せになります。日常的にお金の引き出しを経理担当の家族に依頼するうちに、不正操作をした者も最初は少しくらいならと甘い考えを持ち始めます。数万円から始まった財産の不正操作も、数十万円、数百万円とエスカレートしていき、遺産相続発生までの間には結果的に数千万円ものお金を自分のものにしてしまうのです。
弟に経理を任せていた法律事務所所長のある弁護士も被害にあいました。家族経営の事業で、経理を親族に任せることはよく行われています。
地方都市で法律事務所を営む弁護士のO先生。職人肌のO先生は法律業務のことで手一杯で、そろばんは苦手。経理を含めた補助的業務一切を担い、屋台骨を支えていたのがO先生の弟でした。
数十年にわたりO先生を支えてくれた弟が、交通事故で急死してしまいました。突然、経理担当を失ったO先生は、日常業務に忙殺されながらも妻といっしょに亡弟の業務を引き継ぎました。ところが昔の事件を思い起こしながら帳簿を精査するうち、不審な点が多々あることに気付きます。
確かに解決した事件の報酬が、帳簿上で確認できない。依頼者に連絡を取って確認したところ、事件解決直後にとっくに報酬金を支払っているとのこと。領収書も確認できました。その後も銀行口座で入金が確認できているにもかかわらず、帳簿に載っていない売り上げが複数確認できました。ほかにも、事務所にはない備品を購入した領収書が発見されるなど、弟の不正は最終的に数億円にも上ることが分かったのです。
遺された義妹との話し合いも難航し、何とO先生は弟の相続人を相手に、裁判をすることになってしまいました。

6 家族間で対立関係が生じている方序章 こんな家庭で起きやすい

財産の不正操作が可能であっても、家族としての良心は通常、不正操作を思いとどまらせます。
しかし、家族の関係が悪いと、財産の不正操作を決行するにあたりためらいを感じなくなります。
遺産相続トラブルに限らず、親が子供を裁判で訴える事件はそれほど珍しくありません。親子だけに赤の他人に対してよりも余計にもめるのです。家族愛が失われた時、可愛さ余って憎さ百倍となってしまうからでしょうか。
相続人同士では男兄弟間での遺産相続紛争が多いです。弟だけには親の財産を渡したくない兄が、親をそそのかして不動産を自分名義に変更させたり、自分に有利な遺言を無理やり作成させたりした結果、遺産相続をめぐるトラブルに発展し、遺産分割専門の遺産相続弁護士が間に入らなければ解決できないほど兄弟間の関係がこじれてしまう事例が数多くあります。
兄弟間の不仲だけでなく、遺産相続トラブルにおいて兄弟の配偶者が暗躍するケースもよくあります。面倒なことに、義兄弟は相続人ではないので、特別受益の問題では清算できず、結果として遺産相続トラブルが紛糾してしまうのです。
遺産相続における特別受益に該当すれば財産の不正操作が発生しても、資力がある限りは遺産相続の遺産分割において清算することが可能です。相続財産の勝手な持ち出しについて、生前贈与を受けたと主張された場合、相続人が相手であれば遺産相続における特別受益として調整することができます。
しかし、遺産相続において義兄弟や義子は相続人ではないので、生前贈与分について遺産相続における特別受益の問題で調整することができません。
法律の間隙をつく意図があってかどうかはわかりませんが、財産の不正操作の被害品をあえて義兄弟や義子名義に変えてしまい、遺産相続をめぐる相続人間のトラブルにはならないように細工する相続人もいます。こうなってくると、贈与の有効性を問題にして訴訟をすることになります。

遺産相続弁護士のコラム 特別受益とは

被相続人が死亡し遺産相続が発生した後は、共同相続人間で法定相続分に従って遺産を相続するのが原則です。ところが、共同相続人のうちで、被相続人から遺贈や、婚姻、養子縁組または生計のための贈与を受けた者がある場合は、それら贈与をまったく考慮せずに法定相続分に応じてその者にさらに遺産を取得させることは、遺産相続において共同相続人間の公平を損ねることになります。
そこでこれらの贈与を特別受益として計算し、遺産相続における遺産分割で調整することになります。
具体的には、被相続人が死亡時に有していた財産の価値に、生前に贈与された財産の価値を加えたものを遺産相続における相続財産とみなします。そこから法定相続分の価値を算出し、さらに生前贈与を受けた分などの遺産相続における特別受益分の価値を差し引いた金額を、遺産相続における特別受益を受けた者の相続分とします。この調整を遺産相続における特別受益の持ち戻しといいます。特別受益の計算方法は複雑ですから、相続人の中に特別受益を受けた者がいると考える場合には、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して対応を検討しましょう。

特別受益を持ち戻す場合の相続額の計算例
特別受益を持ち戻す場合の相続額の計算例
遺産相続における特別受益にあたるか否かの判断

ある贈与が遺産相続における特別受益にあたるかどうかの判断は簡単ではありません。遺産分割に詳しい遺産相続弁護士がわかりやすく説明します。
まず、遺産相続において、遺言で財産を贈与する遺贈については、どのような遺贈かにかかわらず全て遺産相続における特別受益になります。
問題は生前贈与です。生前贈与については、持参金、新居、道具類、高額の結納、高額の新婚旅行費用などの婚姻のための贈与、養子縁組のための費用、高等教育の学費、家など、生計の資本としての費用を出していた場合だけが特別受益になります。この点が非常にわかりにくく、誤解している方が多いようです。遺産分割に詳しい遺産相続弁護士の説明を見てみましょう。
結納金や結婚式の費用については原則として特別受益にならないと考えられていますが、審判例では共同相続人中に既婚者と未婚者がいる場合には、特に多額ではない結婚式挙式費用も遺産相続において特別受益として考慮すべきであるとしたものもあります。
学費に関しても、特に1人だけに高等教育を受けさせる場合は、遺産相続において特別受益となるものの、大学進学率が高い現在の状況下では、特別高額の場合を除いて大学の学士程度であれば、遺産相続において特別受益に当たらないと考えるのが一般的です。
また、孫の進学資金を援助してもらった、生活費の足しにした、会社の設立資金としてもらったといった場合であれば、遺産相続において特別受益になり得ますが、海外旅行に使った、おみやげとして高級バッグをもらったなど、贅沢をするために使ったという言い分が出てきたときは、遺産相続において特別受益には該当しません。遺産相続における特別受益には、「生計の維持の基盤」となる財産の贈与を受けたといえなければ該当しないのです。
遺産分割に詳しい遺産相続弁護士からの注意ポイントは、贅沢品を購入した場合には遺産相続における特別受益に当たらず、生活費の足しにした場合には遺産相続における特別受益に当たるという点です。生前贈与を受けていない側からすると不条理であると感じるかもしれません。

贈与の受取人による違い
贈与の受取人による違い
特別受益かどうかの判断
特別受益かどうかの判断
遺産相続における特別受益の評価

生前の贈与が遺産相続における特別受益に当たる場合、遺産相続開始時点で持ち戻しの計算を行うことになっています。現金の場合は貨幣変動を考慮した上で遺産相続開始時の貨幣価値で計算します。土地や株式は贈与を受けた後に売却したとしても、現物があるものとして遺産相続開始時の評価額株価で計算します。なお、受贈者自身の行為によらず財産が滅した場合(天災などで滅した場合など)は、遺産相続における特別受益がなかったものとして扱われます。
その後、遺産分割時の時価評価に基づいて各自の具体的な取得割合を決めて分割を行います。
遺産分割に詳しい遺産相続弁護士から注意点を一つお伝えします。贈与、遺贈が相続分よりも多くても、返還を請求することはできないので注意が必要です。

持戻し免除の意思表示

遺産相続における特別受益に当たるとされても、被相続人が持ち戻し免除の意思表示をした場合は、持ち戻しを行わなくてもよくなります。ただし、持ち戻し免除の意思を書面ではっきりと示している場合は少なく、黙示の持ち戻し免除の意思表示があるかどうかが問題になります。この認定に当たっては、贈与した経緯、趣旨、その他被相続人が受贈者から利益を得ていたかどうかなどを総合的に考慮して判断されるため、遺産分割専門の遺産相続弁護士のように多くの事例を見てきた弁護士に確認する必要があります。
持ち戻し免除の意思表示が遺留分を侵害する場合、遺留分減殺請求がなされた時は、これを持ち戻して遺留分の算定をすることになり、その限度で持ち戻し免除は無効になります。しかし、遺留分減殺請求がなければ、当該持戻し免除は有効となります。

遺産相続弁護士のコラム 特別受益の証明責任

遺産相続トラブルについて裁判で争うことになった場合、遺産相続における特別受益に該当する事実については、これを問題とする相続人が証明責任を負うことになります。領収書や受領書などの証拠によって証明できない場合は、遺産相続における特別受益として考慮することはできません。
遺産相続における特別受益を証明しようとする相続人は、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して、金融機関に対し、被相続人および遺産相続における特別受益を得た相続人の預金の取引履歴について調査嘱託を申立てます。調査嘱託とは、訴訟などで、官公庁などの第三者に一定の事実関係などを照会する制度です。
預金者の共同相続人は、ほかの相続人の同意がなくても単独で、被相続人名義の預金口座の取引履歴の開示を求めることができます(最一小判平成21年1月22日、民集63巻1号228頁)。もちろん、遺産分割専門の遺産相続弁護士も相続人の代理人として、被相続人名義の預金口座の取引履歴の開示を求めることができます。
問題は、遺産相続において特別受益を得た相続人の預金の取引履歴です。相続人のプライバシーの問題も生じますから、開示にはその相続人の同意が必要になります。同意がない場合には、遺産相続における特別受益の主張が合理的であり必要性が認められる場合に限り、調査嘱託を実施することになるでしょう。遺産分割専門の遺産相続弁護士からの注意点は、ある程度までは特別受益を受けていることに関する証拠をつかむ必要があるということです。
実際には、生活費の援助にしても孫の進学資金の援助にしても、家族間での金銭のやりとりなので、領収書などが存在しないのが通常でしょう。通帳にお金の移動の痕跡がないことも多いといえます。遺産相続トラブルにおいて、特別受益の証明は簡単ではありません。

遺産相続弁護士のコラム 何とかして処罰できないのか?

財産の不正操作をした者を何とかして処罰したいので警察に被害届を出したい。このような相談が遺産分割専門の遺産相続弁護士の下に多く寄せられます。
財産の不正操作は犯罪です。窃盗罪として刑法235条により、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
ただし、兄弟に対して処罰を求めて被害届を提出しても、警察は事件として受理してくれず、受理されても刑法244条1項「配偶者、直系血族又は同居の親族」にあたり、刑が免除されます。刑事事件として処罰することはできませんので、何とかして遺産相続をめぐる民事事件として責任を負わせるしかありません。遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談して遺産相続トラブルに関する裁判を起こすことなどを検討することになります。
兄嫁が財産の不正操作をはたらいた場合、「配偶者、直系血族又は同居の親族」のいずれの関係にもないため刑法244条1項は適用されず刑は免除されませんが、同条2項「その他の親族」に該当しますので告訴がなければ公訴提起、あるいはそれに向けた捜査の手続きができません。逆に兄嫁を告訴すれば、捜査を開始してもらうことも理論上はできそうです。
もっとも、「法は家庭に入らず」、すなわち家族間の問題について国家が刑罰権の干渉を差し控え、親族間の規律に委ねる方が望ましいという刑法244条の趣旨から、警察の態度はもともと消極的であるのが現実です。
なお、兄嫁が財産の不正操作をはたらくために実家に侵入した場合、住居侵入罪(刑法130条)が成立し、これには親族間の特例はありません。といっても、住居侵入罪で立件することもやはり現実的ではありません。
窃盗罪で処罰されないのは納得がいかない。窃盗罪が無理でも、何らかの罪で刑事罰を食らわせたい……。
どうしてもということであれば、銀行に対する私文書偽造、同行使罪で捜査を進めてもらうことも理論上は可能です。
ただし告訴できるのは、「犯罪により害を被った者」(刑法230条)。
私文書偽造、同行使罪の実質的被害者(社会的法益に対する罪なので、形式的被害者は存在しないという考え方が一般的です)は、財産の不正操作の被害者ではなく銀行なのです。
財産の不正操作の被害者は、銀行に対する私文書偽造によって直接的に被害を受けたわけではないのですが、犯罪事実を告発して捜査を進めるよう求めることはできます。財産の不正操作に関する事情を全部知っている遺産分割専門の遺産相続弁護士を介して、警察に働きかけを行うことになります。
ただし、証拠集めは大変で、銀行の内部資料を謄写して筆跡などを確認しなければいけません。家族間でのやりとりにおいて書面を残す方は少なく、お金のやり取りについて借用書や贈与契約書のようなものもないのが通常です。刑事事件として告訴するのに十分な証拠が揃わない場合も多いのです。銀行としても紛争に関わりたくないと考え、協力には消極的な態度になるでしょう。遺産分割専門の遺産相続弁護士が粘り強く交渉するしかないでのですが、なかなか難しいのが現実でしょう。
証拠収集について銀行に協力を求めることは現実的ではない。警察が介入に対して躊躇しがちなのは窃盗と一緒。法は家庭に入らずという趣旨が同じく妥当するのです。警察が動いてくれない以上、不正操作をした者が処罰されることは実務上なかなかないのです。
不正操作をした者に刑事的には責任を取らせることができない以上、何としてでも民事的に責任を取らせなくてはなりません。遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が活躍する場面です。

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