第3章 偽装・ねつ造・コピペは朝飯前遺産分割弁護士.com

財産の不正操作はお金と土地を盗むことを紹介しましたが、知能犯だけに犯罪を糊塗するためのアリバイもでっちあげます。遺産相続トラブルに関する裁判では、このアリバイを崩すために遺産分割専門の遺産相続弁護士が活躍することになります。

1 偽装工作の手口

遺産分割専門の遺産相続弁護士がいくつか事例を紹介します。
遺産相続トラブルに関する裁判でよく問題となる売買契約書や贈与契約書を偽造する方法の1つとしては、ある文書の署名押印部分をコピーして、それを契約書に切り貼りして作成する方法があります。
このようにして作成された契約書は、遺産相続トラブルに関する訴訟の場で原本が提出されることはありません。原本は切り貼りですから、提出することはできないのです。遺産分割専門の遺産相続弁護士が考える重要ポイントは、遺産相続トラブルに関する訴訟の証拠として写しが提出されたということです。本来であれば原本が提出されるはずの書面であるにもかかわらず、写しが提出された場合には要注意です。遺産分割専門の遺産相続弁護士が写しの内容を詳細に検討することで、偽造を証明することができる可能性もあります。
遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が、偽造が判明した事例をいくつか紹介します。たとえば、写しとして提出された契約書末尾の署名押印欄のうち、他の当事者の部分には署名の下にそれ用の点線が入っており、押印部分にも印鑑用の丸が囲ってあるにもかかわらず、もう一方の当事者の署名押印部分は点線も丸囲みもない場合は偽造を疑いましょう。別の文書から署名押印部分を切り貼りしたことが、このように判明するケースもあります。
また、ある書証の署名押印部分の筆跡が、既に提出されている別の書証の署名押印部分の筆跡と重ね合わせて完全に一致したので、別の文書の署名押印部分を切り貼りして作成された書証であることが判明したケースもあります。

署名欄の切り貼り
署名欄の切り貼り

もう1つの方法として、既に作成された真正文書の記載の一部を後から改ざんする方法もあります。
この方法によって作成された文書は、改ざん部分の記載位置が不自然になります。
たとえば、契約当事者の一方の署名や住所記載の文字間隔が、他の部分に比べて詰まって不自然であるケース(下図左)や、本文の書き始めが欄外から始まっていて不自然であるケース(下図右)です。

改ざん

また、原本から写しをとって、その写しにボールペンで加筆し、それをさらにコピーして裁判所に提出するケースもあります。これは遺産相続トラブルに関する裁判における原本確認の際に偽造がバレるパターンです。他にも、書証として手紙と封筒が提出されたのですが、原本を確認して手紙の折り目に従って折ってみると、提出された封筒に入らなかったケースもあります。提出された手紙と封筒はセットではなく、手紙は封筒の消印の時期に差し出されたものではないと判断できます。
原本確認をすることにより、紙片の折り目やパンチ穴の有無、消しゴムの消し跡などの物理的な形状によって偽造が暴かれることもあります。偽造された文書なのかどうかを判断する際には、文書全体を検討して矛盾点や不自然な点はないかを見極める必要がありますので、問題となる文書を遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に見せて検討しましょう。
原本を所持しているはずの者が原本を所持していない場合には、その事実自体が事実認定をする場合に重要な間接事実になることがあります。偽造を認定するうえで重要となる間接事実に関する判例を遺産分割専門の遺産相続弁護士が紹介します。貸金弁済の領収証はなくても、借主が借用証書を所持している場合には、特段の事情がない限り、貸金は弁済されたものと推定すべきだとされています(最判昭和38年4月19日)。借用書は本来、貸主が保管しているものですから、借主が借用書を持っていること自体が、弁済と同時に借用書を返してもらったことを推定させるのです。
内容虚偽の契約書が作成された場合は、作成当時ではあり得ないような体裁や内容かどうかという点も、偽造であるかどうかの判断のポイントとなると遺産分割専門の遺産相続弁護士は考えます。
たとえば、契約書に使われている用紙の製造会社に調査嘱託して、その用紙の製造時期を調べたところ、作成されたとされている時期にはその用紙が販売されていなかったことが判明したケース。収入印紙の形状が契約書の作成年度のものとは異なっていたケース。パソコンやワープロの文字の品質が、契約書作成当時のものとしては不自然に高精細であるケースなどです。
また、昭和の時代に作成されたはずの契約書の支払時期の欄に、平成の年号が記載されていたケース。郵便番号や電話番号の桁数が増加する前の時期に作成されたはずの契約書の中に、変更後の番号が記載されていたケース。消費税の税率が3%の時期に作成されたはずの契約書の中に、5%で計算された売買金額が記載されていたケース。このように一見して明らかにおかしいと判断できるものもあります。遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して、契約書の体裁や記載内容を冷静に検討・分析することが必要となるのです。

2 無断押印

(1)印鑑が無断で押されている場合(二段の推定)

長男が抵当権設定に当たり、親の印鑑を無断で押印した場合は、印鑑の無断使用に当たります。しかし、抵当権設定契約書に親の実印と印鑑登録証明書がついていれば、よもや問題となることはないだろうと、普通は考えられてしまいます。
銀行の規則では、他人の債務に担保を提供する物上保証人に直接、意思確認を行うようになっていますが、全ての取引において徹底されていないのが現実です。長男への貸付金について、寝たきりの親が所有する不動産に抵当権を設定することは実際によくあります。
実の親子だから問題ないだろうと判断されることも多いと聞きます。
長男の資金繰りや家族関係がうまくいっているときは問題が生じません。しかし、長男が返済不能となり、銀行から返済を迫られるようになった際に問題は顕在化します。
印鑑が無断に使われたケースの場合、「二段の推定」の問題が出てきます。無断押印の問題を考える際に必ず出てくる「二段の推定」ですが、非常にわかりにくい考え方ですから、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士がわかりやすく説明します。
民事訴訟法228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定しています。つまり、本人の印章と文書の印影が一致すれば、本人の意思に基づいて押印されたものと推定され、さらにその結果、文書全体が本人の意思に基づいて作成されたものと推定されるということです。本人の意思に基づいて押印がなされたことを前提としたうえで、第二段の推定である文書全体の成立の真正が覆る場合もあります。たとえば、本人が白紙に署名したところ、他人がこれを悪用して文書を完成させた場合や、文書作成後に変造・改ざんがなされた場合です。文書自体の現状や文書が作成された経緯などについて、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士とともに検討したうえで、こうした事実を文書全体の成立の真正に合理的な疑いを生じさせる程度に証明すれば、第二段の推定は覆ることになります。委任状の交付の経緯や、同一機会に交付されたとされる印鑑証明書の日付等に不自然な事情が認められるとして、当該委任状は署名押印以外が白紙の状態で、別途の目的で交付され、後に日付等が勝手に補充されたものだという偽造の主張を認めた判例(最判昭和35年6月2日集民42号75頁)もあります。第一段として押印の真正を推定し、さらに第二段として文書全体の成立の真正を推定するという構造です。
① 本人の印鑑が押されている→本人が納得して押印
② 本人が納得して押印→文書の内容が正しい

印鑑の押印と「二段の推定」
印鑑の押印と「二段の推定」

ここにおける「推定」とは、ある事実の存在から別の事実の存在をひとまず判断することと考えてください。裁判所が文書全体の真正を認定する際の基準となりますが、反証があれば覆すことは可能です。
したがって、たとえ署名・押印が本人の意思に基づくことが証明された場合であっても、遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が他の事情を検討して、本人が当該文書のうちの署名・押印部分を除く部分の内容を知って署名・押印したことについて疑いを生じさせることにより「推定」を覆すことができます。
「推定」を覆すケースとして遺産分割に詳しい遺産相続弁護士が紹介するのは、署名・押印後に当該文書の記載内容が変更された場合などです。
この民事訴訟法条228条4項の規定に加えて、判例は「文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、当該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴326条(現行民訴228条4項、筆者加筆)にいう『本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ』の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることになるのである」と判示しました(最三小昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)。
この判例の要点を遺産分割に詳しい遺産相続弁護士がまとめると、印影が本人の印章によって押されたものである場合は、本人の意思に基づいて押印されたものと推定されるということです(第一段の推定)。第一段の推定を正当化する根拠は、印章は慎重に取扱われており、理由もなく他人に使用させることはないはずだという経験則です。
なぜ判例のような推定が認められるのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明します。印章を重要視する日本の取引慣行に鑑みると、本人の印章を他人が勝手に使用することは通常考えられません。文書に本人の印章の印影が顕出されている場合には、本人自ら押印したか、本人の意思に基づいて第三者が押印したかのいずれかであると考えられ、判例のような推定が認められることになります。
この第一段の推定を覆すことができる事例としては、①印章を紛失または盗まれて勝手に使用された可能性のある場合、②目的を特定して印章を預けたところ、目的外使用された可能性のある場合、③印章の保管を頼んでいたところ、保管の趣旨に背いて使用された可能性のある場合などがあります。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が実務で二段の推定が問題となると考えるのは、印鑑が盗用されたケースです。つまり、同じ家に住んでいる妻または夫が、夫または妻の印鑑を用いてその名義の保証契約書や担保権設定契約書を作成した場合、あるいは同居の息子が親の印鑑を用いて保証契約書を作成したり担保権設定契約書を作成したりした場合などです。
文書に名義人の印影が顕出されているものの、自分が押したものではない、自分の意思に基づくものではないケースですから、二段の推定のうち、印影の存在によって本人の意思に基づいて押印されたことを推定する第一段の推定が争われているのです。
財産の不正操作においては、第一の推定を覆す活動が中心になります。

(2)無断押印を主張するには

もっとも、第一段の推定の根拠である経験則は、何らかの原理原則に基づくものではなく、通常このように行動する蓋然性が高いということですから、この経験則を絶対視することはできません。この経験則が前提としている事実関係を欠く場合には、そもそもこの経験則を適用することはできません。では、どのような場合であれば、この経験則が適用されないことになるのでしょうか。まずは、この経験則が前提としている事実関係を見てみます。この経験則が前提としている事実関係として遺産分割専門の遺産相続弁護士が挙げるのは、主に次の4つです。
①本人の印章
②印章の管理状況が慎重・適切で、他人の無断使用が不可能であること
③印章の預託状況
④本人による押印の可能性
この4つの前提根拠を欠く状況であれば、推定の前提根拠を欠くことになります。無断で押印されたと主張する者は、これらこの4つの前提事実を欠く状況を主張すればよいのです。4つの前提事実を欠く状況について、以下のような4つの状況を遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明します。

「第一段の推定」を覆す根拠
「第一段の推定」を覆す根拠
①印鑑の共用

第一段の推定を適用する前提として、本人が専ら使用している印章であることが必要です。
例えば、親子で三文判を共用していたケース(最判昭和50年6月12日判時783号106頁)や、親が一方的に息子名義で印鑑登録をしてずっと管理していたケース(東京地判平成12年8月31日)では、第一段の推定を適用することはできず、推定は破られることになるでしょう。
上記の三文判を共有していたケースでは、「当該名義人の印章とは、印鑑登録をされている実印のみをさすものではないが、当該名義人の印章であることを要し、名義人が他の者と共有、共用している印章はこれに含まれないと解するのを相当とする。これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実によれば、『本件各修正申告書の上告人名下の印影を顕出した印章は、上告人ら親子の家庭で用いられている通常のいわゆる三文判であり、上告人のものと限つたものではない』というのであるから、右印章を本件各申告書の名義人である上告人の印章ということはできないのであつて、その印影が上告人の意思に基づいて顕出されたものとたやすく推定することは許されないといわなければならない」とされています。
遺産分割専門の遺産相続弁護士がポイントをまとめますと、第一段の推定がされる場合の印章は、当該名義人専用の印章であることが必要なのです。なお、名義人専用の印章であれば、いわゆる三文判であっても二段の推定は働くことになりますが、名義人専用の印章であることの蓋然性という点では実印よりも低いと評価されます。

②勝手な持ち出し

印章が慎重・適切に管理保管されており、他人が勝手に使用することなどできない前提があってこその推定です。実際には慎重・適切に保管されておらず、他人の盗用の可能性も否定できない事情がある場合には、第一段の推定を適用することはできません。
遺産相続トラブルに関する訴訟では、印章がどのように保管されていたのかが争点となるのですが、仏壇や戸棚、食器棚などに保管されており、その保管場所を他の家族や関係者も知っていた場合や、家族全員分の印章を共通の場所で保管していた場合などには、推定を働かせる根拠を欠きます。
その他、どのようなケースで推定の適用が否定されるのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が検討します。高齢で認知症を患っているため印章の保管がそもそもできないケース(東京地判平成10年10月26日金法1548号39頁)では、推定を適用することはできないとされました。
名義人本人の印章が第三者に盗難されたり、無断で持ち出されたりして、本人の知らないうちに使用されたケースでも、推定を適用することはできません。例えば、XがYに対して、Aから裏書譲渡を受けて所持するY振り出しの約束手形金を請求した事案では、「Yは従前本件手形のY名下の印影と同じ刻印の印章を所持しており、印箱に入れてY方の事務所に置いて日常の使用に供していたが、昭和34年頃にそれが紛失したこと、その頃同業者で(証拠として提出された〈筆者加筆〉)手形の受取人になっているAがたびたびY方に出入りしていたこと、YはXから本件手形金の支払請求をうけたが振出のおぼえがなかつたのでAに詰問したところ同人はYに対して謝罪し何とか自分の手で解決すると弁明していたことなどの事実を認めることができるのであつて、これらの事実からすれば前記Y名下の印影はAがYの印章を勝手に押捺したものではないかとの疑をいれる十分の理由があるので、かかる事情の下では上叙の如き推定を用いる余地は全くないものといわねばならない」とされています(大阪高判昭和40年12月15日金法434号8頁)。
第三者が名義人本人と同居しており、その印章を自由に使用できる状況である場合にも、推定を適用することはできません。この場合には、第三者と名義人本人が同居しており名義人本人の印章を自由に使用できる状況にあったこと、書面記載内容自体についての疑問点、書面作成の必要性がないことなど、名義人本人の文書であることが疑わしい事情を経験則上判断して、推定を覆します(最判昭和45年9月8日裁判集民100号415頁)。

③無断使用

推定の前提となっているのは、本人が理由もなく印章を他人に使用させることはないということです。必要に迫られない限り、本人に無断で勝手に印章を使用することはないはずです。したがって、もし無断で本人の印章を使用する必要があるという事情が認められれば、推定を覆すことになります。どのような事情があれば本人の印章を無断で使用する必要があると判断されるのでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が判例を踏まえて解説します。
印鑑を預かっていた者が経済的に困窮していて、融資を受けるのに保証人が必要であった事情が認められ、印章冒用の可能性を立証することができれば、推定を認めることはできないことになります(東京高判昭和61年4月17日金法1134号46頁)。
また、Y会社がAから資金援助を受けていたなどの事情により、会社印および代表者印をAに預託していたが、その趣旨はY会社の手形・小切手の濫発防止であり、Y会社が預託後に手形などを振り出す際には手形用紙にナンバーや伝票との刻印をすることになっていたところ、Aが預託された印章を利用してXに手形を振り出したため、XがY会社に対して手形金請求した事件で、「Y会社が会社印および代表者印をAに預託するに至った経緯、右預託後、Y会社において右預託印章を使用して手形などを振り出す際の状況、ならびに(書証〈筆者加筆〉)各記載にナンバーや刻印などのない事実」を考慮して、印影が本人の意思に基づいて顕出されたとの推定を認めることはできないとしています(最判昭和47年10月12日金法668号38頁)。

他人が使用目的を偽って本人から印鑑を預かり、勝手に使用することは珍しくありません。このような事情が認められる場合には、遺産相続に関する裁判で偽造に関する主張をすることになりますので、早期に遺産分割に詳しい遺産相続弁護士に相談しましょう。

④本人は押印不可

本人が押印したり、押印の意思を認めたりすることができない場合、推定を働かせることはできません。例えば、夫の印章による印影があったとしても、夫が長期間出稼ぎに出ていて、その期間中一度も帰宅したことがない事情が立証されれば、推定は覆ることになります(最判平成5年7月20日判時1508号18頁)。
もっとも、実際には、印章が盗まれて押印できなかった、あるいは紛失していたので押印できなかったなどと主張されて、警察に被害届や盗難届が出ていたり、別の銀行に紛失届が出ていたりするケースもあります。こうしたケースほど、全体として主張に不自然な点があり、盗難や紛失の主張に疑問があることもあります。
上記のような推定が認められないケースを遺産分割専門の遺産相続弁護士が分析すると、財産の不正操作が問題になる場合には、二段の推定を用いる際には慎重になるべきであることがわかります。父親本人の印鑑が押された契約書があるから争いようがないと諦めるべきではなく、偽造を問題とすることができるかどうかについて、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談し検討すべきです。
偽造について検討する際、削除、挿入、訂正などは影響するでしょうか。遺産分割専門の遺産相続弁護士が解説します。
文書に削除、挿入、訂正などがある場合、加除訂正部分も当該文書の一部ですから、加除訂正後の現在の状態について推定がおよびます。
文書の外形上、削除、挿入、訂正などが不自然である場合には、推定が及ばないことになるでしょう。

第一段の推定の根拠前提を覆す事情
①本人の印章①印鑑の共用
②印章の管理状況が慎重適切②勝手な持ち出し
③印象の預託状況③無断使用
④本人による押印③本人は押印不可

(3)財産の不正操作の特殊性

遺産相続トラブルなどで文書の真正が問題となる場面において、実際には夫や妻や親が印鑑を大切に保管しており、普段は他人が容易にその印鑑を使用できない状況にあったことが証明された場合には、印影の同一性から文書の成立の真正を推定しても問題ないでしょう。
逆にいえば、容易に家族が無断で使用できる状態で印鑑が保管されていた事情がある場合には、印鑑が押されていたとしても、真正に文書が作成されたという推定は妥当しません。実際に本人の了解を得て、あるいは本人の意思に基づいて当該印影が押された事情が明確でない限り、文書の真正を認めるべきではない、という考えも成り立ちます。
このように、二段の推定の場面では、印影が同じだからすなわち文書の成立の真正が認められるわけではなく、印鑑の保管状況や印鑑を容易に使用できる状況の有無が問題になるのです。
そもそも本来、本人の意思に基づく押印かどうかという文書の成立の真正を判断するための事実は、契約の成立に必要な意思表示そのものの存否を推認させる重要な事実であることも少なくありません。二段の推定によらずとも、本来証明すべき有効な意思表示の存在そのものを検証することも可能な場合があります。
遺産分割専門の遺産相続弁護士からのアドバイスは、財産の不正操作が関係する遺産相続トラブルの訴訟で印鑑の冒用が問題となった場合、二段の推定にばかりとらわれず、「本人の意思に基づく押印ではない」ことを窺わせる事情を慎重に検討することです。

3 遺言のねつ造

「もめないための遺言を作成しましょう。」
遺産分割専門の遺産相続弁護士からのアドバイスとしてよく言われることですが、もめない相続のための道具である遺言を悪用する不逞の輩がいます。不正操作をした者は自らの不正操作を糊塗するために、遺言を利用するのです。
父親の預金を勝手に引き下したり、贈与契約書を偽造して不動産の登記を移転したりする。典型的な財産の不正操作を行った場合に、不正操作を隠蔽し遺産相続開始後に遺産相続トラブルに発展するのを回避するために、遺言を作成させ、付言事項に預金や不動産を贈与した旨を書かせて辻褄を合わせるのです。遺産相続トラブルが相続人間で裁判になった場合、不正操作行為が露呈してしまうのを何としてでも防ぎたいと考える不正操作をした者にとっては、財産の不正操作の内容に沿った遺言を作成させることが必須となるのです。
付言事項にわざわざ記載されている以上、他の相続人も問題にしにくい状況を作り出します。有効な遺言があれば、遺産分割協議を経て遺産相続トラブルに発展することなく財産を承継することができるので、遺言を作成させるのです。
遺産相続トラブルを多く見てきた遺産分割専門の遺産相続弁護士の立場からすれば、公正証書遺言が作成されていたとしても、果たして遺言者の真意を反映したものなのか、遺言者に遺言能力があり、遺言の内容をしっかりと認識したうえで作成した遺言であったとしても、同居の長男に唆されて作成した遺言ではないのかという点を検討すべきであると警告したいです。
実際は疑う余地があるにもかかわらず、公正証書遺言が存在すれば、「遺言があるから仕方ない」「もう争いようがない」と諦めてしまい、遺産相続トラブルとして戦おうとは思わない方も多いでしょう。こうした効果を期待して、遺言を悪用する財産の不正操作が多いのが現実です。
不正操作をした者が用意周到である場合には、財産の大半を自分が相続する内容の遺言を作成させつつも、遺産相続における遺留分を侵害しないように価値の低い財産を他の相続人に取得させます。遺産相続における遺留分を侵害して争いが生じると、不正を指摘される可能性が高まるからです。不正操作をした者なりの工夫といえます。
遺言をねつ造するケースについて、遺産分割専門の遺産相続弁護士が具体的に説明します。

(1)懐柔して自分に有利な遺言を書かせる

同居の子が主導して自分に有利な内容の遺言を書かせるケースです。
たいていは被相続人と最後まで同居していた相続人が、財産の不正操作を行った後に、最後の仕上げとして遺言を半ば強制的に作成させます。被相続人を懐柔し、断れない状況にして遺言を書かせる。遺産分割専門の遺産相続弁護士が実際に見てきた事例の中には、被相続人が他の兄弟の影響を受けないよう、他の兄弟を実家にあげなかったり、被相続人に会わせなかったりするケースもよくあります。
被相続人が遺言内容を、まったく理解していないこともあります。
酷い話になると、だまして遺言を書かせることもあります。下書き練習であるとして何パターンか作成させる。自分に有利になる内容が書かれている部分で頁が差替えできるようにした上で、何通りかある案の1つであると説明しておきます。署名をさせた後で、自分に有利なページのみを残して残りは捨ててしまうのです。
このようにして、遺言の内容を自分に都合の良いものにし、財産の不正操作を隠蔽することも行われています。

(2)「公正証書遺言だから無効なはずがない」という言い分

争われる余地が少なくなるよう、不正操作をした者は公正証書遺言を作成させることもあります。
しかし、公正証書遺言であれば問題ないのかというと、遺産分割専門の遺産相続弁護士の見解としてはそんなことはありません。
「公正証書は疑義が生じないので絶対」といわれますが、公正証書であっても遺言能力の有無は問題になりますし、公正証書の有効性が争われる事件は少なくありません。
遺言の無効を争って係属(訴訟が進行中であること)する遺産相続トラブルに関する裁判は、裁判所の正確な統計は存在しませんが、増加傾向にあります。
実際の公正証書遺言の作成過程を遺産分割専門の遺産相続弁護士が説明しますと、下書きは代理の者が作成し、遺言者は当日に初めて遺言内容を知らされます。あっという間に、訳も分からず承認しているという実態もあります。公証人(公務員の法律実務家)は、遺言者と証人以外の者を遺言作成の現場から退場させますが、当の遺言者本人が遺言内容をよくも理解せずに承諾しているので、ただのセレモニーと化しているのです。
そして現実に、公正証書遺言を突き付けられて、泣き寝入りしている方も多いはずです。「公正証書遺言が見つかったので、もう争えないのでしょうか」との相談が遺産分割専門の遺産相続弁護士に寄せられています。
遺言があれば原則として、遺言に書かれた通りの財産の分け方が実現されます。争えるとしたら、遺産相続における遺留分の減殺請求程度です。しかし、不正操作をした者が用意する遺言は、遺産相続における遺留分までしっかり計算してあり、争う余地がないものも多いのが事実です。
遺言を読むと、財産は全て同居の長男のものにする内容になっていた。「それがお父さんの意思だから」といわれてしまえば、反論する余地がないように思えてしまいます。

4 生命保険の無断加入

生命保険は、①納税資金対策、②相続税の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)の活用、③相続人間の遺産分割トラブルの調整役という点で、相続対策には有効なアイテムです。しかし一方で、容易に財産の不正操作を行う手段としても使われています。
生命保険金請求権は保険契約によって発生するものであって、相続により発生するものではありません。受取人に指定された相続人が相続放棄した場合であっても、生命保険金の受け取りは可能です。被相続人から相続するのではなく、生命保険会社から直接、受取人がもらうイメージです。
したがって通常は、受取人に指定された者の固有の財産となり、相続財産には含まれません。生命保険金は相続財産とは別として考えられるので、遺産分割協議を経ずに直接、財産を得ることができますので、本来遺産相続トラブルにも発展しません。受け取ったこと自体が他の相続人に知られることは、原則としてありません。
不正操作をした者にとってはこの秘匿性こそが好都合なのです。特定の相続人や、相続人ではない孫や嫁が、自分を受取人に指定した生命保険に加入するように仕向けたり、勝手に加入させたりして、結果的に不正操作するのです。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が複数の生命保険の営業マンに確認したところ、被保険者になる人間に無断で契約している生命保険は、非常に多いと思われます。
契約者や被保険者には本来、対面の本人確認が要求されるべきですが、規則で義務付けられているにもかかわらず、完全には実行されていないようです。
定期的に受診している人間ドックや健康診断の結果表、身分証明書はいつでも家族が持ち出せますし、契約書や告知書の署名は代筆でまかり通ってしまうようです。
対面による本人確認が行われても、成りすましは防ぎようがありません。保険料の支払いについては、銀行口座引き落としが口座情報と銀行印で簡単にできるので、契約者を偽っても手続きはスムーズに進みます。
健康状態に問題のある被保険者が、身代わりを立てて健康診断を受診するという問題もあります。
インターネット保険の普及などで対面契約の要素が薄れていくにつれ、成りすましの問題はますます深刻になるだろうと、ある営業マンは言います。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が考えるには、業界特有の問題として、歩合割合の高い契約で営業マンが激しい競争にさらされていること、営業マン個人によってモラルの差が大きいことなども、財産の不正操作を助長しているといえます。
親が急に保険に加入した方、保険会社のパンフレットが実家に置いてあった方は要注意です。高齢化社会の進展に伴い、高齢者でも加入できる生命保険が登場していますので、親が高齢で生命保険に加入できないような年齢だからといって安心することはできません。保険会社や保険の種類によって違いはあり、一般的には70歳から80歳までであれば加入できますが、85歳であっても加入できる商品を扱う保険会社もあるようです。

生命保険は相続財産とは無関係
生命保険は相続財産とは無関係

5 相続分放棄のねつ造

(1)相続分不存在証明書

相続分を超過する特別受益を受けている相続人が、遺産相続における相続放棄や遺産分割協議の手続きを経ることなく、「私は、被相続人から既に法定相続分に等しい生前贈与を受けているので、被相続人の相続においては、相続すべき相続分はないことを証明します」といった「相続分不存在証明書」を作成し、他の共同相続人に交付することで、遺産相続における特別受益を受けた相続人を除外した相続登記の申請をすることが認められています。
遺産相続における相続放棄とは異なり、家庭裁判所での手続きは必要ありません。相続分不存在証明書に実印と印鑑証明を添付するだけでできます。また相続放棄をした場合、初めから相続人ではなかったことになりますが、相続分不存在証明書にはそのような効果はなく、相続人の地位を失うことはありません。被相続人に借金があった場合、相続不存在証明書を作成した相続人もその返済を求められる可能性があります。

証明書を作成した相続人には相続分がないため、遺産分割協議書にこの相続人の印鑑がなくても、相続分不存在証明書があれば遺産分割協議書の代わりにすることができます。
しかし、このことは、財産の不正操作を行う者にとっては好都合です。相続分不存在証明書を1通作成させれば目的を達成することができるからです。
遺産分割専門の遺産相続弁護士が注意を促したい不正操作をした者の手口は、自分以外の相続人から「相続分不存在証明書」を入手して、相続登記の申請をし、不動産を自分の単独所有にしてしまうというものです。
相続分不存在証明書はなじみのない書面であることから、相続分不存在証明書の意味や内容を知らないまま署名押印してしまったり、実際には生前贈与を受けておらず特別受益も発生していないのにだまされて署名押印してしまったりした結果、相続分を不正操作されてしまうケースは多いのです。

(2)相続分不存在証明書を作成してしまったら相続分を失うか

「相続分不存在証明書」が偽造された場合や真意に基づかない場合、事実に反する場合には、これに基づいてなされた登記は無効です。「相続分不存在証明書」に署名したからといって、相続分を失うことにはなりません。
この場合は、遺産分割専門の遺産相続弁護士に相談して遺産分割調停などを申し立て、その手続の中で「相続分不存在証明書」の無効を主張していくことになります。

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