財産の取り戻し方遺産分割弁護士.com

財産の不正操作と戦う

1 裁判で遺産だと認めさせる

遺産を分ける裁判は遺産分割調停なので、財産の不正操作も遺産分割調停で一挙に解決できると思いがちですが、財産の不正操作は遺産分割調停では解決できないのです。

(1)調停手続きは後回しに

遺産分割調停での最初の確認事項は遺産の範囲です。どこまでの財産が遺産なのかを決めることが先決問題なのです。どの財産が遺産でどの財産が遺産ではないかということが決まらなければ、遺産分割調停が始められません。
実務においては、申立人に取下げを勧告することになります。訴訟が係属したり、訴訟の提起が見込まれたりする場合には、前提問題が解決するまでの間、遺産分割手続を進めることが適当ではないので、申立人に遺産分割申立事件の取下げを促すのです。
申立人がこれに応じない場合は、審判に移行したうえで、分割禁止の審判をすることになります(民法907条3項)。
申立人が取下げの勧告に応じず、分割禁止の審判をしない事件については、2カ月に1回程度の割合で期日を開き、当事者に訴訟事件の経過報告をさせます。

前提問題の訴訟が長引きそうな場合には、一部の遺産分割をすることも検討されます。
あるいは、不起訴合意のうえで審判手続きを続けたり、調停をしない措置(家事事件手続法271条)がとられたりすることもあります。
いずれの方法にせよ、前提問題が解決するまでは遺産分割手続がストップすることになります。

(2)審判では解決できない

ある財産が被相続人の遺産に含まれるのか否かという問題は、実体法上の問題であり、民事訴訟により確定する必要があるものです。
訴訟による解決は、実体的権利義務に存否を確定するものですから、その解決には既判力が生じます。
一方、原則として審判は実体的権利義務が存在していることを前提として判断する手続きですから、遺産の範囲についての判断に既判力は生じません。
したがって、遺産分割の前提問題に争いがある場合には、審判手続きで全ての問題を解決することはできず、民事訴訟による解決が必要となるのです。

2 差し押さえる

(1)今すぐ動け!

財産の不正操作をする人間なのだから、裁判が係属している間に財産を隠してしまったり、第三者に売却してしまったりして、強制執行できなくさせてしまうことも考えられます。裁判で勝つことと回収できることとはイコールではなく、ギャップがあります。このギャップを埋める手段が民事保全制度です。
訴訟や調停をする前に、不正操作をした者の持っている不動産や預金口座を移動や出金できなくし、不正操作をした者の財産を凍結するのです。

(2)民事保全手続きの中身

民事保全手続とは、民事訴訟の本案の権利(貸金返還請求権等)の実現を保全するために行う仮差押えや仮処分の手続きをいいます。
将来なされるべき強制執行における請求権を保全するため、裁判に先立って相手方の財産の現状を維持・確保することを目的とする予防的・暫定的な処分です。
民事保全には、ア仮差押え、イ係争物に関する仮処分、ウ仮の地位を定める仮処分があります。

ア 仮差押え

仮差押えは、裁判を起こす前に、相手方の不動産や預金等の財産を前もって仮に差し押さえ、将来の回収を容易にする手続です。仮差押命令は、債権者の申立てにより裁判所が決定で行います。
債権者は被保全債権(債権者が債務者に対して有する金銭債権の存在)及び保全の必要性を疎明する必要があります(民事保全法13条、20条)。
保全の必要性とは、本案訴訟を提起して判決を待っていたのでは強制執行をすることができなくなり、又は著しい困難を生ずるおそれがあることをいいます。現時点で仮差押えをしておかなければ、執行力のある債務名義を取得した時点で当該目的物が散逸しているおそれがあるかどうか、債務者において発令により被るおそれがある損害より少ないと思われる目的物がその対象とされているか等の点が、実務上考慮されます。具体的には、不動産が目的物である場合には、その不動産が処分されたり、担保が設定されて余剰がない状態になってしまったりするおそれがあると判断されれば、保全の必要性があるということになります。

イ 係争物に関する仮処分

係争物に関する仮処分は、特定物の引渡し等、金銭債権以外の請求権について、将来における執行保全のために物的状態の現状維持を命ずる手続で、2つに分類できます。
1つは、処分禁止の仮処分。これは登記請求権を保全するために不動産の処分を禁止するための仮処分です。自分の所有する不動産の登記が他人名義になっているため、抹消登記請求訴訟を提起する場合に、債務者が訴訟係属中に第三者に登記を移転してしまわないようにする場合等です。
もう1つは、占有移転禁止の仮処分。不動産の明渡し請求権を保全するために占有の移転を禁止するための仮処分です。明渡し訴訟係属中に債務者が当該不動産に第三者を住まわせる等して占有を移してしまい、明渡しの強制執行ができなくなるおそれがある場合等です。

ウ 仮の地位を定める仮処分

仮の地位を定める仮処分は、判決によって権利又は法律関係が明確になるまで現状を放置しては取返しのつかない結果になるおそれがある場合に、裁判により一応暫定的に法律状況を定めておく手続です。
財産の不正操作をした者に対する仮処分としては主に、ア仮差押え、イ係争物に関する仮処分を使っていくことになります。

(3)隠し口座を暴け

見つかりたくない財産を保管する場合、発見されにくい金融機関の口座に預けていると考えるのが自然でしょう。金融機関の差し押さえは支店単位で特定する必要がありますが、地方銀行や信用金庫、ネット銀行等も念頭において差し押さえを検討すべきです。ネット銀行は支店名がトリッキーですので、仮差押えに当たって特定が困難と言われています。
銀行における本人の特定は、第1段階として氏名と電話番号でなされることが多いようです。氏名は「ふりがな」で判断されるとのこと。つまり、「山田幸子」という1人の人間は、「ヤマダユキコ」名義と「ヤマダサチコ」名義の2つの預金口座の可能性を検討するべきです。女性の場合、旧姓で開設した口座をそのまま生かしておき、その口座を利用して財産の不正操作で得たお金を保管しておくこともあります。

(4)相手方からの仮差押えもありうる

相手方が反訴を提起のうえ、こちらの財産に対して仮差押をしてくる可能性は大きいといえます。
自分の財産も差し押さえられるだろうと予測し準備したうえで、訴訟提起の準備を進めるべきです。場合によっては口座からお金を引き出しておく必要もあります。

3 差し押さえが無理でも口座を凍結させる

裁判上の手続きを踏むいとまがない場合はどうするか?凍結させる口座は、被相続人の口座でも、財産の不正操作をした者の口座でも、その時々の状況に応じてターゲットを変えていきます。
被相続人の口座は亡くなった瞬間に凍結されるわけではありません。銀行が相続の事実を把握するまでは、口座が有効なまま生き続けるのです。本人がいなくても暗証番号を知っていれば、ATMからはお金を引き出すことができます。
親と同居していた兄が無断でATMからお金を引き出しているに違いない。そのような場合は、銀行に相続が発生した事実を告げて口座を凍結させましょう。
被相続人の口座からは既に無断で引き下ろされている。凍結が間に合わなくても、相続人名義の口座に被相続人のお金が入っていることがわかっている場合は、銀行に対して財産の不正操作をした者からの引き出しに応じないように要求し、口座を凍結させることも考えます。

4 証拠を収集する

(1)相続税申告を単独で

単独で相続税の申告(遺産未分割での申告)をし、後日遺産が完了した時点で更正請求や還付手続きをするという方法も検討できます。
相続税の申告をしたうえで、税務調査をしてもらうのです。相続財産について各相続人間で矛盾する内容の申告が行われないように、通常は相続人全員がそろって申告をすることが通例なのですが、単独で申告をすることもできます。各相続人間の申告内容に矛盾が生じている場合は、税務調査が行われることになり、財産を隠している相続人が調査の過程で相続財産の存在を自白することになります。
相続人自らの通報をきっかけに税務調査を行ってもらうことで、遺産全体の金額や不正行為を炙り出すことができます。

(2)銀行相手に裁判をする

銀行から証拠を引き出すためには、銀行を被告にして民事訴訟を提起するという手もあります。銀行と預金者の関係は債務者と債権者です。預金者は銀行に対し、預金返還請求権を有しています。金融機関としては、他の相続人に対する責任を免れるために、相続人全員に対して訴訟告知をすることになるでしょう。
訴訟になれば、銀行も防御活動のために内部資料を出さざるを得なくなるでしょう。

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